ごあいさつ(2023年)

新年のご挨拶

令和6年1月1日

令和5年度 触媒学会会長
薩摩 篤
SATSUMA Atsushi 
(名古屋大学)

 みなさま,あけましておめでとうございます。謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年5月8日にCOVID-19が5類感染症に移行したことにより, 触媒学会の行事もようやく対面主体の開催が戻ってきた。対面での触媒討論会はヒートアップ。北大での討論会は夏日なのにエアコンの無い教室だったから余計に熱かった。若手会による「第43回夏の研修会」は合宿形式での開催が4年ぶりに実現し、COVID-19に抑えつけられていた鬱憤を晴らすかのように講演会では活発な質問が飛び交う。夕食後の懇親会を兼ねたポスター発表では、若手が開始から終了までポスター前で激論を交わす。「オジサンが若手の頃は飲み会が中心だったけど」なんて、若手の熱気に水を差すようなことはしてはいけない。このまま真っ直ぐ立派な研究者を目指してもらいたい。
 触媒化学は実用的な観点から発展してきた分野であるため、社会との関わりを強く意識している。今社会で求められている技術には、カーボンニュートラル社会を実現するための技術開発、Material Informaticsを活用した触媒材料の創製、廃プラスチックのリサイクルに代表される循環型社会の構築、グリーンケミストリや資源の有効利用技術など様々な課題がある。既にこれら課題の解決に繋がる触媒関連技術が、論文や触媒討論会で報告されている。持続的な社会のため、今後ともさらに効果的な技術の研究・開発が期待される。
 本年7月には触媒分野での世界最大の会議International Congress on Catalysis(18th ICC)がフランスのリヨンで開催される。日本はその4年後となる2028年の開催に名乗りを上げている。18th ICCには多くの皆様が参加され、日本の存在感をアピールし、そして2028年の19th ICCの2028年の日本開催に繋がることを願っています。
 2024年は1月1日にM7.5の能登半島地震が発生し、多くの家庭が被害に見舞われた。1月2日には羽田空港でのJAL機と海上保安庁の航空機の衝突による炎上があった。年明けから大事故が続いている。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げるとともに、本年はこれ以上の災害が無いことを祈る次第である。

会長メッセージ

令和5年6月15日

 このたび令和5年度の会長を仰せつかりました薩摩篤です.触媒学会には学部4年の3月から入会し, 以降諸先生方の叱咤激励を賜りながら研鑽を積ませていただきました.研究者として育てていただいたご恩を返すべく, 触媒学会の発展のために働かせていただきます.
 2020年から我々の研究活動, 学会活動に大きな制約を課してきたCOVID-19も, この5月から5類感染症に移行し, ようやく以前の日常が戻りつつあります. これまでオンライン会議が主体であった触媒学会の行事も, 対面での現地開催がメインになりつつあります. 情報の取得だけならオンラインはメリットが多い開催形式ですが, 人的交流となると対面に勝るものはありません. 本年3月の第131回触媒討論会は完全オンサイトで開催され, 現地(神奈川大学)での活発な議論が復活しました. 5月の日韓触媒シンポジウムもソウルでのオンサイト開催で, 韓国の触媒研究者との久々の対面で大盛況でした. また, 8月の若手会の夏の研修会が合宿形式で予定されていることは喜ばしく, 触媒学会の未来を担う若手研究者間での密度の高いコミュニケーションを通して, 幅広いネットワークが構築されていくことをおおいに期待しています.
 所信表明でも述べさせていただきましたが, 令和4年度の山中会長の方針を踏襲して, 任期中は次の3つの重点課題に取り組みたいと存じます. 最優先は, 触媒学会の科学・技術・社会への貢献. 特にCO2削減は待ったなしの課題であり, エネルギーの脱化石化やCO2有効利用のための技術革新が求められています. 触媒学会には, 二酸化炭素変換, 光触媒, 水素製造と利用, バイオマス変換, 燃料電池などの研究会に代表されるように, グリーンエネルギーとCO2有効利用のための要素技術の研究基盤があります. これらがより一層活発に活動できるようサポートしていきます.
 次に若手の育成と活性化. 昨年度, 学会の若手メンバーによる「触媒の未来を考えるWG」からの提言なされました. 提案された数々の素晴らしいアイディアを, 可能な限り実現していく所存です. 既に実施が決まった提言が触媒討論会のB3講演です. 触媒学会の持つ「討論を楽しむ」文化を多くの学生に体得していただき, 研究者としての活躍ためのステップになることを願っています.
 そして国際的プレゼンスの向上. 学会として取り組んでいるのは2028 年の International Congress on Catalysis (ICC) の開催誘致です. 2024 年7月にフランス, リヨンで開催される18th ICCの Abstractの受付が今年9月から始まります. この大会で, 日本の触媒科学・触媒技術の存在感を示すことが重要です. 皆様の積極なご参加をお願いする次第です.